(サンタンジェロ城 右下に私)
先回の続き:ローマの詐欺師の話です。
ローマのボルゲーゼ公園へ行こうとツレと2人で歩いていた時のことです。
水飲み場(ローマには水道があちこちにある)で男性が車を停めて水を飲もうとしているのに会いました。
ところが水は出なかった様子で、通りかかった私達に「オー、ノー」と両手を上げて、外人がよくやる格好をしたので、互いに笑い合いました。
彼は車へ戻りながら「どこから?」「日本」と言うと「おお、私の奥さんは大阪生まれ」と言い、そこから話が始まりました。(話は英語)
40〜50代のばりっとした服装で、いかにも紳士という感じです。
「私はフェラーリのマネージャーをしていて、ちょうど日本でのグランプリが終わったところだ。スズカサーキットへも行った」
たしか当時、日本でそういう大会がありました。
「写真を撮らせて」と言うと「私はフェラーリに属していて、顔を写されるのは困る。サインもダメ」と断ります。
そしてしきりに車内の何かを見せるために顔を覗き込ませようとします。(本人は運転席にいる)
車から離れようとすると、手を取ってキスをして「見せたいものがあるんだ」と言いました。
綺麗な袋から立派な箱を出し、うやうやしく蓋を開けると、高級そうな腕時計でした。芸術品のような。
これをプレゼントしたいとか北京がなんたら言ってますがよくわかりません。なんせ私の英語力は中学生レベルですから。
その後もいろいろ話しかけられカタコトで返す会話を楽しんだ後、彼はアメックスのカードを出して、「ガソリンが少なくなってきたので入れようとしたら、何故かアメックスカードが使えなくてね」と言います。
はあ?ここでやっと、おかしい‼️と気づいた私。(遅いですよね)
「これ詐欺だ!」とツレに言って「NO、NO、NO!」と車から離れようとしましたが、彼はまだまだ話を続けて車内へ顔を入れさせようとします。
2人で「お金は持ってない」と強く言って車を離れたとたん、むこうもあっという間に走り去りました。脱兎のごとく、という表現がぴったり。
ツレと顔を見合わせ、あっけにとられたというか何というか・・・
この時の事を思い出すと、こんな詐欺まがいに引っ掛かりそうになったなんてバカな私達、と恥ずかしくなります。詐欺について本で学習したことばかりだったのに。
❶「親しげに近づいて来る者に注意」
たぶん彼は車中から、歩いている私達に目をつけ、先回りして水飲み場まで行って、たまたまの出会いを演出したのでしょう。
❷「プロの詐欺師は風景に溶け込む服装をしている。上品、上質な服のことが多い」
まさに紳士のような服装と振舞いでした。
❸「一緒に写真を撮らせない」
フェラーリのマネージャーなので写真は困る、なんてバカな言い訳にすっかり騙された私達。くっくっくやしい〜!
❹「曲者とは会話がはずむ」
私達は中学英語とジェスチャーを交えたカタコト英語なのに、彼とはおもしろいほど話がはずみました。なんてことはない、彼の方でこちらに話を合わせていただけでした。それも自分に都合よく。
❺「あっけらかんと消え失せる」
しまった、失敗だ、とわかると、取り繕う事もせずサヨナラも言わずあっという間に去って行きました。
プロは「このカモは失敗」と思うとさっさとターゲットから外して次のカモを探しに行くそうです。忙しいのね。
❶〜❺のあやしいことばかりだったのに、ついつい惹かれて話し込んでしまった私達。悔しい!恥ずかしい!
でもそれだけ彼の技が上手だったということですね。
勉強になりました。
ローマの秋の風物詩にもなっている焼き栗売り。右のコーンのような容器へきれいに入れてくれます。
おい、フェラーリ詐欺男、君もこうして栗売りでもして地道に働け!