縁あってこの本を読みました。
開戦80周年記念出版だそうです。
著者の酒巻和男さんは、太平洋戦争で1941年12月8日のハワイ真珠湾攻撃に特殊潜航艇(2人乗り)で出撃することになります。
開戦と同時に、真珠湾に碇泊する米艦隊を潜航艇5艇で奇襲する作戦です。
ところが真珠湾を目指した酒巻さんの艇は方向を定めるジャイロコンパスが故障し、湾内へ入ることもできず座礁してしまいます。
2人は艇を爆破し岸に向け泳ぐ途中で意識を失い、酒巻さんだけが米軍の捕虜となります。
太平洋戦争捕虜第一号です。
「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓に縛られた酒巻さんは、激しい屈辱から殺されることを望みますが、それを許さない米軍の厳しい監視下に置かれ、自死も許されませんでした。
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一方、日本軍は戦意高揚のため、真珠湾攻撃で戦死した5艇の搭乗員9人を「九軍神」として讃えます。
ただ1人生き残り捕虜となった酒巻さんは「国の恥」だとして生存自体が隠され、搭乗員は初めから9人だったことにされます。
( 2020年12月8日 徳島新聞 )
その後、捕虜となった酒巻さんは米国に送られ、全米6カ所の収容所を転々としながら4年間を過ごします。本にはその時の様子も詳しく書かれています。
そして1946年1月11日、やっと帰国が叶いました。
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帰国後はトヨタ自動車に入社します。
捕虜時代に学習して身につけた英語力を生かし、会社の国際的発展に手腕を発揮しました。
開戦の真珠湾攻撃から、捕虜となった4年間と、帰国してからのことを綴ったのが本書です。
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旧漢字や旧仮名遣いは改められていて大変読みやすい本でした。200余ページありますが引き込まれて一気に読んでしまいました。
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酒巻さんの生涯を振り返ってみると「こんな日本人がいたのか」と感嘆します。
歴史から抹殺することなく、この本が多くの人の目に触れるといいなあと思います。
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★ 酒巻さんのご子息である酒巻潔氏から、本書についてお聞きする機会がありましたので以下に紹介します。
① 捕虜になってから帰国するまでの体験談は実に臨場感があります。
②捕虜収容所で米軍兵士から「欲しいものは?」と聞かれて、新聞と辞書を要求し米国とはどういう国かを知り、転向していった様子がよく描写されていると思います。
③ 後からどんどん増えてくる捕虜に対し、その心情を理解した上で説得しています。そうすることで多くの命を救い生き方を教え、捕虜集団をひとつの方向に導いたリーダー性は現代にも通ずるものがあります。
④ 「歴史は正しく伝えなければならない」ということから、開戦50年時にTBSからビデオ「歴史から消された男」が出されています。
⑤ 本書についてのご質問は
株式会社 イシダ測機
TEL 088-625-0720
E-mail:info@isds.co.jp
へお願いします。
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酒巻潔氏にブログの原稿を見ていただいたら返信メールが来ましたので、それも載せさせていただきます。
酒巻潔氏
Email : skmk0455@yahoo.co.jp